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助け船
「おいしそうな?????」蝉の幼虫の唐揚げ
泰山を下りて、近くの食堂で食事をすることになった。ごく一般の大衆食堂だ。
楊さんは壁のメニューを示して、「何がいいですか。」と、聞いた。そこで、私はいつものごとく「何でもいいです。」と答えた。
だいたい中国ではメニューの漢字は分かってもどんな料理が出てくるかは分からない。それで、選びようがないのだ。そこで、楊さんはたたみかけるように、「〇〇はどうですか。」と、聞いてきた。「〇〇」のところが、聞き取れなかったが、やっぱりいつものように「いいですよ。中国の料理は何でも好きですから。」と、答えた。
さらに「飲み物は?」と、来たので、これもいつものように「ビールをお願いします。」と答えた。さらに「ここは、青島に近いから青島ビールがいいですね。新鮮なのが来るかもしれない。」と付け加えた。
程なく、いつもの「生ぬるビール」が出てきた。つまみを待ちながらちびちび飲んでいると、突然、「蝉の幼虫の唐揚げ」が出てきた。さっきの「〇〇」はこれだったのだ。
「何でも好きです。」と言った以上、これも食べなければならない。それで、できるだけ、味が染み込んでいそうな奴を選んで口にして、おいしそうな顔をした。思ったより、癖がなく、すんなりと食べられた。そして、「おいしいです。」と、言った。
実際においしくなかったわけではないが、初めてなので、気持ちが悪かっただけだ。それでビールで、流し込むようにして飲み込んで、一息ついた。
中国人は食事の場で相手においしいかどうかをよく聞く。そのときは「おいしい」と、言わなければならない。聞かれる前に「好吃(ハオチー)」と言うのが一番いいのだが、このときはそのタイミングを逸した。
総勢5人、みんなで、つつくからだいぶん減ってきた。私はこのあと行く曲阜(きょくふ)のことを聞いたりして、時間を引き延ばしながらビールを飲んだ。
でも、そろそろ次の1匹を食べなければならないかなと、思っているとき、次の料理が来た。私にとってはタイミングのいい助け船と、なった。
結局、食事が終わる頃には蝉の幼虫の料理は全部なくなっていた。私だって次の機会にはおいしく食べられると思う。
そこで、次に小波さんとここへ来るとき、何食わぬ顔で「〇〇」を注文してみようかと思った。